忘れ得ぬことども

はじめての「国際オフ」

 少し前にイルさんからメールが来て、香港ICQ友達に会うので同席しませんかというお誘いを受けました。イルさん自身が浜松の人で、あまりオフ会などに参加する機会がないため、そういうことで上京した機会に他の人とも会いたいと思われたようです。
 一昨年の暮れに私の自宅でちょっとしたオフ会をやった時に、イルさんも参加して下さいまして、その時の参加者の中ではProspecせんせと私のふたりが、その後も引き続いてネット付き合いを続けていたもので、そのふたりにお誘いのメールが来たわけです。
 最初、今日の夜にという話でした。せんせは香港の人というのにびびったのか、
「MICさんが参加するなら……」
と言ったとか言わないとか。
 私は土曜の夕方からは定期的な仕事が入っておりますので、夜では無理、それで香港の人と会うのは諦め、しかし昼間ならあけられるので、とりあえずイルさんとだけでも会いましょうと返事をしました。
 その後、予定が変わり、香港の人も昼に会うということになりました。せんせは昼間はあいていないので、結局私だけ加わることになったのです。

 待ち合わせ場所が、新宿の京王百貨店前周辺ということだったので、どうもイヤな予感がしました。地上にも地下にも入口があるし、入口もいくつもあるし、ちゃんと巡り会えるのかなと心配になりましたので、とにかく私とイルさんはそれに先立って地下の献血ルーム前で落ち合うことにしました。
 私が少々遅刻してしまったのですが、なんとかイルさんと邂逅を果たしました。約1年半ぶりですが、彼女はあまり変わっていなかったので比較的すぐ判別できました。
 少し前に香港の人から電話が入ったのだが、途中で切れてしまって要領を得なかったとか。
「滅多に持ち歩かないんで、携帯の使い方よくわかってないんですよ。こっちが悪いのかなあ」
何やら心許ないことをおっしゃっています。
 京王百貨店の地上正面玄関へ移って待ちましたが、時刻になっても相手は現れません。
「会ったことあるんですか?」
「いえ、写真は送って貰ったんですが」
「イルさんの写真は送ったの?」
「送ってないです。大体の服装とかは伝えましたけど」
「じゃあ、こっちが見つけてあげなきゃどうしようもないんだ(^_^;;」
 しばらくして、何度かイルさんの携帯電話にかかってきましたが、何度やってもろくに話さないうちに切れてしまうのだそうで。
 改札口に見に行ったり、だいぶうろうろした揚句、ようやく30分ほど遅れて、本来の待ち合わせ場所であるデパート入口に、中国語のガイドブックを抱えているふたり連れの女の子を発見。やれやれです。

 イルさんのICQ友達はキャサリンと言って、友達のリリアンとふたりでしばらく日本に滞在しているのでした。ふたりとももちろん香港人で、中国名もちゃんと持っています。
 私にはよくわからないのですが、香港の人は英語名を持っているのが普通なんでしょうかね。ブルース・李サンだのジャッキー・陳サンだのアグネス・張サンだの、単に芸名かと思っていたのに(^_^;; そういえば仕事で関わっている英会話学校にも、香港出身の先生(かわいい女の子ですが(^_^;;)が居てレベッカという名前を持っています。
 中国人の名前は、古くは姓と名と字(あざな)の三つの部分がありました。例えば「劉」が姓、「備」が名、「玄徳」が字となります。日本も江戸時代までは同様で、「西郷」が姓、「隆盛」が名、「吉之助」が字です。その字の部分が、英国植民地だった期間の長い香港では英語名化してしまったのかもしれません。

 髪型が同じせいもあってか、なんだかキャサリンとリリアンは非常によく似て見えました。本人たちも自覚していて、
「よく姉妹だと間違われるんですが、ただの友達です(^_^;;」
と笑っていました。
「それにいつもリリアンの方がお姉さんだと思われるんですが、あたしの方が年上です♪」
 年上と言って、ふたりが何歳なのかは失礼だから訊きませんでしたが、この時期に長期旅行のできることを考えるとまだ学生さんでしょう。香港は6月下旬に学年が終わり、9月から新学年となります。顔つきや、話している様子からも、社会人ではないだろうと思いました。
 イルさんは
「写真で見るよりずっと美人♪」
とおだてていました。男である私が言うべき言葉でしょうが、そういう英語がスラッと出てきません。いや、日本語でも真顔でそういうことを言うのは照れくさくて出てこないと思いますけど。

 年下であるリリアンは間違いなく学生で、大学で日本語を勉強しているそうです。片言の日本語を話しました。しかしそんなものですでに宮崎シーガイアだの長崎ハウステンボスだの行ってきたそうです。私はどちらもまだ行ったことがありません(^_^;;
 今日も、このあと代官山へ行くつもりだと言い、代官山のことをイルさんや私にあれこれ訊くのですが、あいにくイルさんも私も代官山などほとんど知らないので、全然お役に立てませんでした。持っていたガイドブックを見せて貰ったら、なるほど代官山が妙に大きく扱われているではありませんか。なぜだ……(^_^;;

 高層ビル街の上の日本料理屋でお昼を食べながらいろいろ話をしました。イルさんはもともと英語の先生なのでコミュニケイションになんら不自由しませんが、私の英語はリリアンの日本語よりもっとおぼつかない感じで、ずうっと黙っていることになるのではないかとひそかに心配していました。
 が、まあ、向こうの言っていることはとりあえず7割か8割くらいは理解できたので、こちらもいい加減な英語をしゃべくっていました。まあ5割か6割くらいは通じたことでしょう。話題によっては向こうの言ったことを私がイルさんに説明したりする場面もあり、結構楽しい時を過ごすことができました。
 昼食が済んでから近くのインターネットカフェに行きました。そこでイルさんとリリアンが、国際電話をかけに出て行ってしまい、私は日本語のまるっきりわからないキャサリンとふたりで取り残されました。つっこんだ会話になると自信がないので、「MIC's Convenience」やらイルさんのHPやらを呼び出して見せたりしてお茶を濁していました。イルさんのは英語サイトなので問題ないのですが、当店はご覧の通りのオンリージャパニーズなので、キャサリンはどのくらいわかったものか……まあ、漢字である程度の見当はつくかもしれませんが。

 残念ながら仕事に行かなければならない時間になってしまったので、イルさんたちが帰ってきたところで失礼しました。
 国際オフははじめての経験でしたが、なかなか新鮮で面白かったです。また機会がないかな。

(1999.7.3.)

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