このところ雨模様の天気が続いていましたが、久しぶりに抜けるような青空になりましたので、どこかへ出かけたくなりました。外へ出ると、ついこの間までの蒸し暑さが嘘のようなさわやかな空気です。
今日は秋分の日で休日ですから、川口駅で、ホリデーパスを買って電車に乗りました。土曜と休日だけ、一日中東京近郊のJR線に乗り降り自由という切符で、この前平塚の友人宅を訪ねた時などは、往復するだけで充分元が取れたというお得なものです。
お彼岸なのでお墓参りに行く人が多いのでしょうか、電車は混んでいました。ここ何日かどうも体調がよくなかったので、坐れないのは少々つらいものがありましたが、ともかく秋葉原まで行き、総武線の電車に乗りました。これもなぜか妙に混んでいて坐ることができません。
錦糸町で快速に乗り換えました。総武線快速電車は横須賀線と直通運転をしていますが、最近はほとんどの列車がE217型という新型の車両になっています。ステンレス製で性能がよいのでしょうが、大半の車輌が通勤型のロングシートになっているのが面白くありません。ただ千葉側の3輛ばかりだけ、セミクロスシートになっていることを知っていましたので、当然プラットフォームの千葉側に陣取って待ちました。
快速電車はさほど混んでおらず、ボックスを占領するまでには至りませんでしたが、楽に坐ることができました。途中駅からももっぱら降りてゆくばかりです。
この快速は内房線の君津行きで、そこで後続の電車に乗り換えて浜金谷まで行き、東京湾を横断する船に乗ってこようというのが今日の私のプランでした。
ところが、ふと気づいてみると、ホリデーパスが通用するのは、君津の手前の木更津までです。鉄道のことならなんでも来いというような顔をしていながら、こういうへまなことをしてしまうのもしばしばなのですが、ともあれ木更津から浜金谷までは別途に運賃を払わなくてはなりません。どうせ後続列車を待たなければなりませんので、木更津で降りて切符を買い直しました。
木更津からは、支線の久留里(くるり)線が出ています。東京近郊では珍しく非電化のまま残っているローカル線で、2輛編成のディーゼルカーがプラットフォームに入ってきたのを見て、そちらに乗りたくてたまらなくなりました。しかし、乗ってしまうとますますホリデーパスが無駄になってしまいます。我慢して、入ってきた内房線の鈍行列車に乗りました。
快速が走っている君津までは複線で、内房線もそれなりに幹線の顔をしていますが、その先は単線となります。駅には自動改札もなくなり、地下道もなくて、屋根もついていない跨線橋がかかっているばかり。走っているのは電車とはいえ111型や113型といった昔ながらの旧式タイプで、車窓も田園や雑木林や寂しげな海岸となり、すっかりローカル線の趣きを備えます。時折りそんな中を、えらくモダンなデザインの特急「ビューさざなみ」号が突っ走って行くのが、なんだか大変に違和感を覚えます。
錦糸町で待っている頃までは、少し涼しすぎるくらいだったのが、この南房総までやってくると、陽射しが肌に痛いくらいでした。
浜金谷も他の駅とそう変わらない田舎駅ですが、少し歩くと港があって、三浦半島の久里浜までの船が出ています。房総半島と三浦半島というふたつの観光ゾーンを結んでいるので結構利用者も多く、特に車の人がよく使うようです。
船に乗るのは好きで、甲板で風に当たっていると、もやもやしたものが心身共に吹き飛ぶような気がします。
さっきまでなんとなく気分がすぐれなかったのが、ローカル線の振動で解きほぐされ、この海風ですっかり洗い流されたようです。とても爽快な気分になりました。
あいにく、東京湾の出口のところを横断しているこのフェリーは、わずかに35分で久里浜に着いてしまいます。昼食に船中で買ったノリマキを食べていると、早くも対岸の港が見え始めました。あと1時間くらい乗っていたいと思います。
久里浜港から久里浜駅まではバスで10分ほどですが、京急バスなので京急の久里浜駅にしか着きません。ホリデーパスを無駄にしないため、横須賀線に乗りたいのですが、横須賀線の駅がどこにあるのかよくわかりません。かなり見当違いの方角へ歩いて行ってしまい、一本列車を逃しました。
京急の久里浜駅は、高架線上の大きな駅で、ひっきりなしに電車が発着しています。一方横須賀線の久里浜駅は、操車場があって線路の数こそ多いのですが、プラットフォームは1面だけで、のんびり、というよりはひっそりとしています。横須賀までは複線化さえされておらず、JR東日本はこのあたりでの京急との競争を投げてしまっているようです。
鎌倉で一旦下り、すぐあとに続いてきた「ホリデー快速・鎌倉」号に乗り換えます。その名の通り、土曜と休日だけ運転している不定期列車で、定期列車は通らない貨物線を経由して大宮まで走ります。今日の主たる目的は、東京湾フェリーと、このホリデー快速でした。
不定期列車のわりに意外と混んでいて、おやおやと思いましたが、横浜で大量に下車。それなら何もこの列車に乗らなくてもよいのに。横浜の次の停車駅が西国分寺という奇天烈な列車なので、
「品川・東京方面には参りませんのでご注意下さい」
と、しつこいほど繰り返してアナウンスしていました。それでも間違う人がいるんだろうな。
貨物線(武蔵野南線)は、操車場や貨物駅のところ以外は、大半がトンネルの中を走ります。長いトンネルから抜けると、向こうから南武線が近づいてきて府中本町駅となり、そこからは武蔵野線を走ります。
武蔵野線はしょっちゅう乗っているのですが、ふだん走っていないクロスシートの列車に坐って車窓を眺めていると、なんだか別の線に乗っているようで、旅情をあらたにします。特に荒川を渡る長い橋では、沈みゆく夕陽が映えて、うちの近くを走っているような気がしませんでした。
西浦和からまた貨物線に入り、トンネルをくぐって薄明の大宮駅に着きました。
それからまた京浜東北線の電車に乗って帰ってきましたが、気分はすっかりよくなりました。
やはり私は時々、こうしてふらりとどこかへ出かけないと、体調がうまくととのわないようです。
(1999.9.23..) |