今週はほとんど家の中で過ごしています。まあ今週はもともと、そんなに用事があるわけではなく、手帳も空白が多かったのですが、なんとなく出かけるのもはばかられるようで、最低限の買い物など以外にはほとんど外へ出ていません。 言うまでもなく、新型コロナウイルスの流行のせいですが、それでなくとも花粉症のためにあんまり出歩きたくない季節ではあります。 日本での感染は、増えてはいるようですが、その増加率は頭打ちになってきたようです。ただ、検査自体にある程度の制限がかかっているので、本当のところはわかりません。ただ少なくとも、重篤な発症者がさほど増えていないのは確かです。何人か死者は出ましたが、いずれも持病を患っているお年寄りで、合併症による物故であった可能性が高そうです。 豪華クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号の扱いでは、乗員乗客をなかなか上陸させなかった日本はだいぶあちこちから批判を浴びましたが、最近では結局それが正しい対応方法だったのではないかと評価されはじめているようです。イタリアで感染が早かったのは、この種のクルーズ船などの乗客を無防備にどんどん上陸させたためだろうと言われています。なお「ダイヤモンド・プリンセス」号は英国船籍で、USAの会社が運航しており、日本近海に居たのはまったくの偶然です。寄港を認めるか否かは日本政府の判断ですが、船の乗員乗客に対しては日本政府のコントロール下にあることではありません。それなのに、この船の感染者数を日本のデータに含めて数えている向きがあり、悪意ある曲解というものです。 コロナウイルス騒ぎにより、いろんな行事が取りやめになっています。人がたくさん集まる場というものをなるべく無くすようにという政府のお達しにより、コンサートやイベントも中止になっていますし、美術館などでも数週間の閉館を決めたところが少なくありません。学校も大半閉鎖となりました。仕事もテレワーク(在宅勤務)が推奨されています。それゆえ、電車もだいぶ空いているようです。 他のことはともかく、テレワークの推奨は、今後の日本の会社のありかたを変えてゆくかもしれないとおぼろげに感じています。 ──えっ、もしかして、社員が会社に行かなくとも、仕事は特に問題なくまわるんじゃね? ということに気づく企業が増えそうな気がするのです。社員を一定時間社屋に縛りつけておくことに、そんなに意味が無いのではないかということは、会社勤めの経験の無い私にでも想像のつくことです。もちろん職種によっては、人が「そこに居る」事実が重要という場合もありましょうが、オフィスワークの大半は、社内クラウドなどを利用することで、別に社員同士が机を並べて居なくとも片がつくのではないでしょうか。 仕事がまわるのであれば、社員を一箇所に集めなくともよくなります。それぞれ在宅勤務ということにさせれば、会社が交通費を支給する必要もなくなります。その日その日、あるいはその月その月の業績さえきちんと上げてくれれば、時間配分などは個人個人に任せれば良いでしょう。上司の眼を盗んでネットゲームをこそこそしなくても良くなりますし、上司のほうもそんなけしからぬ部下に眼を光らせる手間が無くなります。 9時から17時まで社員を社屋に閉じこめておくなどというのは、いわば企業の慣習に過ぎません。工場などでは必要なことだったのでしょうが、事務仕事にもそういう慣習を強制していたのは、言ってみればただの「思い込み」だったのかもしれないのです。 こんどの騒ぎを期に、日本の会社のありかたが劇的に変わったりしたら、なかなか面白いのではないでしょうか。 マスク不足はまだまだ続いているようで、ここ2週間ばかり、どこの店でも見かけません。最近では消毒用のアルコールなども品不足であるようです。 そろそろ花粉症が本番を迎える時期で、私などは少々不安になっています。それで何日も同じマスクをつけて外出していますが、マダムには止めてくれと言われました。確かにいささか不潔であるかもしれませんが、どうせウイルスそのものはマスクでは防げないわけで、とりあえず花粉さえ通らなければ良いと思っています。 それにしても、マスクは増産にかかっているという話なのに、ちっとも店頭に出てこないのはどうしたことでしょう。 まあ、ずっと中国で製造していたものが大半だったということなのでしょうね。ウイルスの本家本元から入れるわけにもゆかず、急に他の国の製造に切り替えるわけにもゆかず、それでいろいろ滞っているのでしょう。とはいえ、今回の騒ぎで、製造元を中国から切り替える企業も多くなりそうです。ここ20年ほど、いろいろな分野で中国に頼りきりな面が多かったので、これは良い傾向という気もします。中国製品を排斥しろという意味ではなく、あまりひとつの国に依存する形を作らないほうが良いと思うのです。 毒入り餃子事件で、中国産の食品に対して警戒心が高まりました。レアアース問題で、中国が政治的な要因で経済をコントロールする国であることがはっきりしました。株式の売買禁止をおこなって、そもそも自由主義とは相容れない体制であることも明確になりました。15年ばかり前までは、中国に進出しない企業に未来はないみたいな勢いで、みんなあおられたように進出したものでしたが、その後いろいろやらかして、中国の魅力はだいぶ衰えました。まだヨーロッパ諸国などは眩惑されている気配がありますが、近くに居てあれこれ迷惑もこうむっているわが国としては、少なくとも中国一辺倒は危険だという認識で居るべきだと考えます。 とりあえずマスクに関しては、あと2週間ばかり待っても店頭に並ばないようであれば、暴れても良いかな、という感覚です。 トイレットペーパーやティッシュペーパーの不足は、まるっきりのデマであることがすでに判明しています。デマを流した主婦3人が逮捕されたというデマも流れました。逮捕されるほどの罪状ではないでしょう。北陸のほうの医療生協の職員がデマを流して処分されたという話はもう少し確からしいのですが、いずれにしろ、デマであろうがなかろうが、少し遅い時間にスーパーやドラッグストアに行くと現実に売り切れてしまっているのですから、開店前に並ばざるを得ない状態です。現時点ではほとんどの人がデマと知りつつ、それでも入手するために奔走しているのですから、罪深いデマであったと言わざるを得ません。 わが家ではトイレットペーパーもティッシュペーパーも、心許ない状態でした。トイレットペーパーはとあるスーパーでタイムセールみたいな形で売られていたのでなんとか入手しました。ふだんよりは明らかに高値であるようです。ティッシュペーパーはその翌日、不本意ながら開店前から並んで買いましたが、いつものボックスティッシュではなく、ときおり近くの薬局で薬を買ったときにくれるような、ビニール袋詰めのものでした。それしか入荷していないというのです。まあ、硬い箱がないと困るというわけではないので、無事に買ってきました。そのときはトイレットペーパーも売っていたのですが、前日に他のスーパーで入手した以上、欲張るのも良くないと思って断念しました。ふたり暮らしのわが家よりも、切実に必要とする人がたくさん居るでしょう。 それにしても、製紙会社も販売店も、品薄などということはないと明言しているのに、いつまでも棚が空っぽなのはどうしたことでしょうか。デマを打ち消すには、事実として製品が店頭に並んでいることを示すしかないと思うのですが……。 子供たちが家に居るためだと思いますが、冷凍食品やレトルト食品、カップ麺なども一時品薄となり、おひとり様1個などという貼り紙が眼につきました。一方で、学校給食用に注文されていた牛乳やパンなどがだぶついて始末に困っているという話も聞きます。なんだか日本の流通はいろんなところで不細工さをさらしてしまっているようです。そろそろ9年目を迎える東日本大震災のときですら、もう少し要領良く運べていたような気がします。あのときも、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの棚は空っぽに近くなりましたが、せいぜい数日で騒ぎはおさまったように記憶しています。被災地ですら、飲食物にも困ったのは最初の2日間くらいだったと聞きました。 眼に見えない不安よりも、眼に見える破局のほうが、人は立ち直りやすいということなのかもしれません。結局今回の騒ぎは、ウイルスという眼に見えない存在が、危険度すらはっきりしないままに拡がり続けているという、「やんわりとした恐怖」が、ウイルス自体よりも急速に蔓延しつつあるのが問題なのでしょう。 ある会社が社員用に備蓄してあった6500枚だかのマスクが盗まれるという事件も起こっています。東日本大震災のときにほぼ一件の掠奪事件も起こさずに世界を驚嘆させた日本としては、どうにも外聞の悪い、お粗末な話です。やはり「やんわりとした恐怖」が人々を少しずつ狂わせているようです。 その一方で、今シーズンはインフルエンザがほとんど出なかったという話もあります。コロナウイルスを怖れた人々が、外出後のうがいや手洗い、アルコール除菌、それにマスク着用を徹底した結果、例年に較べてインフルエンザにかかる人の数が激減したらしい。実のところ、インフルエンザのほうが、新型コロナウイルスによる肺炎よりずっと重篤率も死亡率も高いというデータもあり、ある意味ではコロナへの恐怖が、より危険なウイルスを斥けたとも言えそうです。 うがい・手洗い・マスクというありふれた対策を徹底することが、インフルエンザの蔓延を防ぐ最適解であったことが証明されたわけです。もともと日本人は外国人から「病的」と言われるほどの清潔好きですが、結局疫病を防ぐのは衛生観念に尽きるのでしょう。 逆にUSAでは、インフルエンザが猛威をふるい、1万人以上が死亡したとか。USAは地理的に遠いこともあってコロナウイルスにはわりと薄い関心しか無かったようなのですが、実はインフルエンザによる死者と言われている中に新型肺炎の死者も混じっていたのではないか、などとも噂されています。 その真偽はともかくとして、USAの衛生観念が日本より高いかというと、平均的なラインとしてはどうもそうでもないような気がします。とりわけ公衆トイレなどはかなり不潔なイメージがありますし、「海外の反応」みたいなまとめブログで、駅やデパートの公衆トイレにさえウォシュレットが配備されている日本の状況にアメリカ人が仰天しているようなコメントを見ることがよくありますので、向こうの一般的な衛生状態がそこまで達していないのは確かでしょう。 もうひとつ、USAは医療費がバカ高いというのも、被害が大きくなる理由かもしれません。健康保険が任意加入である上に、保険の利く医者は一体に程度が低く、高度な治療を要する場合には眼の玉が飛び出るほどの費用がかかるので、貧乏人は容易に医者にはかかれないという状況があるようです。自己責任の国とはいえ、これはどうしたものでしょうか。 そういえば、私がはじめて中国へ行った高校時代の頃、中国では医療費がタダであるなどという戯言を、日本のジャーナリズムが正気で喧伝していたのを思い出します。いや、当時はまだ社会主義体制が堅固でしたので、ごくごく一般的な医療は無料だったのかもしれませんが、高度な医療になれば大金がかかったのは当然でした。 ともかく、医療に関しては、日本に生まれて本当に良かったと思わざるを得ません。ほとんどの医者に健康保険で診て貰えるという幸運を、私たちは充分に噛みしめるべきでしょう。 さてさて、ともかくそろそろ騒ぎがおさまって貰いたいところです。いろんな仕事がキャンセルになり、マダムも私もバカにならない減収で、月末まで大丈夫だろうかと冷や汗が出るレベルです。
本当なら、これだけ暇ができれば、ちょっとした旅行くらいしてきたいところです。きっとどこへ行っても、通常よりよほどすいていることでしょう。しかし、そんな余裕はどうも無さそうなのでした。暇とカネは容易に両立しないもののようです。とかくこの世はままなりません。 (2020.3.5.) |
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