娘とピアノ
木田麻里さん 2000.11.7.
 このHP見つけて楽しませてもらっています。
 実は11月2日で6歳になった娘の事です。
 ピアノを習い始めて約一年くらいです。
 前回の発表会の時は、まだ習い始めて5ケ月だと言うのに両手を使って、どうにかぎこちなくではありましたけど、上手に弾けました。
 ところが最近になってピアノの練習を嫌がります。
 発表会が12月にあるのですが、だからと言って決して無理な事を言ってるつもりはありません。
 ピアノの椅子に座ってめそめそ泣き出したりします。
 私は3歳からピアノを習い始めたそうですけど、泣く事は無かったと、母が言っていました。
 このままピアノの練習が出来なくなるのではと心配しています。
 大きな期待をかけているわけではなく、せめて初見でピアノが弾けるようになればいいと思っているのです。
 私もその程度なのですが、ピアノが弾けること、音楽を楽しめることで、母に感謝しています。
 子供にもこの楽しみを解って欲しいと、思っているのです。
 なにも楽しみが音楽ばかりではないということは解っているまですが、アドバイスをよろしくお願いします。
MIC 2000.11.7.
 書き込みありがとうございます。
 お嬢さんがピアノの練習をいやがるということですが、この問題は、なかなか難しいところがあるようです。
 いやがると一言で言っても、

 ・ピアノがいやになった
 ・練習がいやになった

の2種類があるようなので……

 かく申す私も、子供の頃は練習があまり好きではありませんでした。
 はじめたばかりの子供の弾くような曲は、なんと言ってもある意味単調ですから、その砂を噛むような繰り返しに飽き飽きするというのは充分に考えられることです。
 私の母親は、そうやって私が練習をサボろうとすると、
 
「それならピアノなんかやめてしまいなさい」
と叱ったようですが、すると幼きみぎりの私は、ピアノ椅子にかじりついて拒否したそうです。
 してみると、私は練習がいやだっただけで、ピアノとか音楽とかがいやだったわけではなかったのでしょう。
 かなり成長してからも、課題として与えられた曲を練習するよりは、自分で何かかにか楽譜を買ってきては片っ端から弾きまくる方が好きでした。
 おかげで今、ピアニストにはなれず、作曲家みたいなことになってしまいましたが(^_^;;


 お嬢さんの場合、どちらのケースであるかを見きわめる必要があるでしょうね。
 音楽とかピアノとかが、そもそもまったく性に合わないという子供も、一応は存在するわけなので……
 そういう場合に、親の考えで押しつけるというのは、やはりむごいことであるかもしれません。
 練習がいやだというだけのことであれば、救いはあります。
 6歳になったばかりとのことですから、しばらく休んでみるのもよいかもしれません。
 あるいは、先生と相談して、課題などを再考していただくということも可能でしょう。

 また、時々あることですが、発表会というのがプレッシャーになっている場合もあります。
 私の妹も中学2年生までピアノを習っていたのに、毎年の発表会のプレッシャーが堪えきれなくなってやめてしまいました。
 去年は大丈夫だったのに、と思われるかもしれませんが、自意識が明確になってくる時期ですから、お嬢さんの感覚も変化している可能性があるわけです。
 いずれにしても、お嬢さんが「何を」いやがっているのかという点を見きわめて、適切な対処をすることが大切です。
 なお、初見能力というのは個人差が大きく、練習すればできるようになると限ったものでもありませんので、あまり期待しすぎない方がよいと思います。

 ところで、麻里さんご自身も子供の頃からピアノを習われていたそうですが、現在も楽しく弾かれておられますか?
 日々の生活が忙しくて弾く暇がない、とおっしゃるかもしれませんが、お嬢さんのためにも、時間を見つけて麻里さんご自身がお弾きになることをお奨めします。
 というのは、子供はなんと言っても親の背中を見て育つものですから。
 お母さんが楽しげにピアノを弾いているのを聴いていれば、自分もやってみたいと思うはずなのです。
 鍵盤を奪い合うくらいになればしめたもの。
 子供に「弾かせる」のではなく、「弾きたいと思わせる」のが何より大事なことではないでしょうか。
木田麻里さん 2000.11.10.
 お返事ありがとうございます。いろいろと考えさせられる内容でした。

 娘の場合ピアノが嫌になったのではなく練習が嫌になったのではないかと思います。単なる音階から始まり、新しく学ぶものが出て来る度に喜んで弾いていましたが、両手になる頃からつまづきはじめたのです。
 右手、左手別々の音を弾く頃になると指は思うように動かない、
 ト音とヘ音とが混乱してくる、そして今では読めていたト音の音階が読めなくなってしまいました。

 そんな状態である事を私自身頭では理解しているものの、前は出来ていたことだから出来るはずという思いが、出された課題をある程度こなした状態で次のレッスン日を迎えたいという思いもあります。
 今は発表会を目前に控えているので
 
「もうすぐ発表会なんだよ!」と怒った事もあり、ついつい娘の指導に力がはいりすぎていたように思えます。
 確かに与えられた課題をこなす、目標としているものを達成する事も大切ですので、そうすべき時でもあるのでしょうが、私の態度次第では娘にとって「ピアノを弾かされている」状態になってしまいますよね。

 私自身の事をお話しすると、前回で述べた様に3歳頃より習っていて、中、高校では嫌で、なんとか休む理由を見つけていた記憶があります、それでも高校後半頃に、先生から希望する曲はないかと聞かれ、迷わず小、中学で所属していた吹奏楽部で演奏したバッハの「主よ人の望みの喜びよ」を希望し、その練習となりました。
 好きな曲だけに弾けるようになりたいとよく練習したのを覚えています。
 今でも教会オルガン当番の時、礼拝終了時の祈りの時に弾くことがあります。
 今は先生についてレッスンはしていませんが、好きな曲、弾いてみたい曲の楽譜を買ってピアノに向かっています。
 仕事、育児の両立で忙しい日々を送っていますが、そんな中でもうまくは弾けなくてもピアノを弾くことで自分の空間にひたり、すっきりした気分になる事を知りました。今思えピアノを習っていて良かったと、私が止めたいと思った時に止めさせないでくれた親に感謝しています。
 なぜならピアノを弾くこと、その時間を楽しむことができるからです。
 そんな思いを娘にね感じてもらいたいと思うのです、それには続ける事が大切ですよね、となると「弾かせる」のではなく「弾きたいと思わせる」この事が必要である事がよくわかりました。

 娘がピアノをはじめたきっかけは、私がピアノを弾いているのを見て興味を持ってくれたところからです。
 
「習ってみる?」と聞いたところ即答でした。それは”お母さんみたいに楽しく弾いてみたい”という気持からだと思います。
 今の状態では楽しいどころではなく、「弾かされている」状態ではないかと気づきました。
 娘が嫌がるのは練習の途中です。日頃練習曲を口ずさんだりしており、いい感じで練習をはじめるのですが、つまづき出すと嫌になる様で、そのときの私の態度が娘を嫌にさせているのでしょうね。
 最近では無理強いせず
 
「今日は終わりにして、明日にしょうか」と声を掛けるようにしているのですが、これも良いのやらいけないのやら迷っています。

 6歳の娘に、今私が望む事はピアノというものに興味を持って欲しい、持ちつづけて欲しい、将来的に楽しい趣味のひとつに加わっているといいなと思っています。
 このような考え方でいいものでしょうか。
 今、娘にとって「弾かされている」であろうこの状態を「弾きたい」と思えるように努力してみようと思っております。

 上手に話せず読みづらいところがありますことをお許し下さい。
MIC 2000.11.10.
 事情は大体拝察いたしました。
 練習が厭になっただけであって、ピアノそのものが嫌いになったというわけではなさそうだとのことですので、時期が来ればまた楽しくなるのではないかと思います。
 ただ、親御さんのとるべき態度としては、やはり難しいものがあるかもしれません。
 なんと言っても小さなお子さんのことですから、ある程度の強制が必要な部分もあるわけで……
 まったくの放任、またはお子さんの好きにさせるだけ、という状態では、これまたあまり芳しい結果を生まないように思われます。
 といって、頭ごなしに叱りつけるのではピアノ嫌いにしてしまう危険も充分にあり、その辺のさじ加減は大変微妙です。

 しかしまあ、子を知るにおいて親にしくものはないわけで、どうかお嬢さんにいちばんいい結果が出るように試みていただきたいと思います。
 低音部記号が出てきて混乱しているということであれば、一旦高音部記号だけのものに戻って、いくつか弾いてみるという方法もあります。
 そのあたりのことは、先生ともよくご相談の上、方針を立ててみてください。
 ピアノに限らず習い事はなんでもそうですが、やってゆく上で何度かの山に突き当たることは必ず起こることです。
 それを乗り越えれば、また新しい楽しみも見えてくるはずですので、あまり焦らずに見守ることが肝要かと存じます。

「愛と友情の遍歴」目次へ戻る