この8月10日から12日まで旅をしてきたわけですが、今年(2020年)の夏は政府主導の「Go To トラベルキャンペーン」というのがおこなわれていることはご存じのとおりです。緊急事態宣言以来、家からなるべく出ないことを推奨されていることもあって、旅行業・観光業に壊滅的な被害が出ているのをなんとかしようという試みです。 海外からの観光客なども当然ながら激減していて、近年増えてきていた外国人観光客をあてにした業者などはもはや虫の息であるわけですが、それは相手のあることだから仕方がないとして、せめて国内の客だけでもなんとか増やそうという魂胆で、夏休み期間の旅行費用の一部を支援する政策を起ち上げたのでした。 緊急事態宣言の解除とともに、この「Go To トラベルキャンペーン」を大いに喧伝しはじめたわけですが、あにはからんやそれから武漢コロナウイルス感染発覚者がすごい勢いで増えはじめ、こんな状態で人の移動を奨励したのではえらいことになりかねないと、みんなが慄え上がるはめになりました。 それで、とりわけ増加の勢いが著しい東京都だけは除外するという、かなり苦しい実施方法になりました。東京都の住民が旅行したり、地方在住者が東京に遊びに行ったりしても、支援は受けられないというわけです。鳴り物入りで喧伝したキャンペーン自体を取り止めるのは無理だろうとはわかりましたけれども、東京都を除外したキャンペーンがどれほどの効果を及ぼすのか、なんとも心許ないものがあります。ただ、実施の結果案外と効果的であったということであれば、なんでもかんでも東京に頼らなくとも日本国は廻せるのだという証左にもなりますから、一種の社会実験として、それなりに面白いかもしれません。ブレーキとアクセルを同時に踏むようなものだとして「Go To トラベル」の実施を批判する向きもありましたが、必ずしも無意味ではないでしょう。ただ東京都民の皆さんは釈然としない気分ではあるでしょうが…… さて、「Go To トラベルキャンペーン」では、旅行会社の企画したツアーなどに参加するのであれば、その旅行会社が還付手続きを全部やってくれるのですが、個人的な旅行の場合は旅行者が自分で申請しなければなりません。 1泊めのコンフォートホテル前橋で、チェックインするときにけっこう懇切な説明を受けました。事後還付手続きの案内書まで渡してくれました。旅行者は、宿から宿泊証明書というものを貰い、支払明細などと一緒に事務局まで申請することになるようです。さすがにビジネスホテルのフロントはこういう点ぬかりがありません。2泊めの英国の森ホテルクイーンズマナは、実際には夫婦経営のペンションで、チェックインのときにもそういう説明はありませんでしたし、宿泊証明書もチェックアウトのときにこちらから言わないと作ってくれませんでした。こちらが先だったら、宿泊証明書をとりはぐれたかもしれないなあと思いました。 ところでほぼ同じ期間、マダムの大学での同級生だった人が、私たちも前にやったことのある「健康ランド」のハシゴをやっていたそうです。駿河健康ランド、石和健康ランド、信州健康ランドという3つの宿泊つき入浴施設を経営している会社があり、なんと無料のバスによって相互の移動ができるのでした。静岡県の興津から、長野県の松本(村井)まで交通費をかけずに行けるのですから、かなりお得と言うべきでしょう。この人も、順序は忘れましたがこの無料バスで移動したそうです。 で、最初に泊まったところでは宿泊証明書を貰えたらしいのですが、次のところでは貰えなかったとか。それもそのはずで、彼は青梅市、つまり東京都の住民であったのでした。 最初のところで貰えたのにこちらでは貰えないのはどういうことだ、と苦情を言ったところ、最初の施設の係員が間違えたのだろうとのこと。まあ、たとえ貰えたとしても、申請時にはねられるので同じことですが、「東京都NG」の実態が見えて、それなりに感慨を覚えました。 青梅ともなると、東京都内とはいえ都心からはかなり遠く離れており、私たちの住んでいる川口のほうがよほど東京の都心に近いと言えます。家から数百メートルしかない荒川を渡れば、もうそこは東京都北区赤羽なのです。ほぼ同じ時期に、明暗を分ける事例でした。 帰宅して、かれこれ10日ばかり経ち、そろそろ還付手続きをしようと思い、コンフォートホテルで貰った案内に従ってGo To トラベル事業のサイトにアクセスしてみました。 なんだかいろんな書類が要るようです。還付申請書はもちろんとして、宿泊証明書や支払明細書の他、銀行口座の確認書、口座番号を確認できる通帳やキャッシュカードのコピー、住所が確認できる免許証などのコピー、それから同行者居住地証明書とかいうものも必要です。 ほとほと面倒くさくなりそうでしたが、費用の35%が戻ってくるとあってはおそろかにはできません。 申請書や口座確認書などは、事務局のサイトに書式があり、プリントアウトして記入すれは良いようです。それよりも、サイトをよく見ると、オンライン申請が推奨されていました。コンフォートホテルで貰った案内には、必要書類を揃えて郵送しなければならないようなことが書かれていましたが、オンラインならこちらも好都合です。 オンライン申請であれば、申請書や口座確認書などは必要ないらしいのでした。入力フォームに必要事項を入力すればそれでOKです。 これは楽だ、と思いかけたのですが、そうは問屋が卸しませんでした。 宿泊証明書や支払明細書、通帳や免許証のコピーなどは、PDFファイルまたは画像ファイルとして添付しなければならなかったのです。そして、それらの書類をファイルにするためには、スキャナが不可欠でなのした。 私のところにはスキャナがあったのですが、あいにくなことにWindows 10にはドライバが対応しておらず、いまのノートパソコンにしてからは使えなくなっていました。 もともと、プリンターなどに較べると、そんなに使用頻度の高い機器ではありませんでした。いちばん必要だったのは、年賀状を作るときに、自作のイラストを入れることを続けていて、その手描きのイラストを読んで画像ファイルに取り込むときです。あとは、ほんのときおり、それこそ免許証とかマイナンバー通知カードなどのコピーが求められたときに使った程度です。 いまのノートパソコンを買ったのは一昨年の春のことで、これまでのスキャナが使えないことはそのときからわかっていました。一昨年の暮れに年賀状を作ったときには、まだ処分していなかった前のパソコンを久しぶりに起動し(この起動もだいぶ不安定になっていたのですが)、そちらにスキャナをつないで取り込みました。常用している外付けハードディスクを前のパソコンにつなぎ直してデータを書き込み、それをノートパソコンに移して作業したわけです。 そして、去年の暮れに関しては、すでに前のパソコンを処分済みだったのと、今年が子年となって干支があらたまったために、この周回は自作イラストは取り込まないことにしたので、スキャナは使用しなかったのです。 そんな程度の利用度とはいえ、スキャナが使えないのは気にかかっていました。 なんだかんだ言って、私はスキャナをずいぶん以前から使っています。最初のは、友人から貰ったものでした。自走式というのか、取り込みたい画像の上を、手に持った機材をローラーのように走らせるタイプのものです。読み込みは遅いし、ちょっとしたことで角度がずれたりするし、なかなか使い勝手の悪いものでしたが、雑誌のグラビアなどを読み込んだりしてそこそこ愉しめました。いまでも自走式のスキャナはあるようですが、当然ながらその頃とはまるで性能が違うことでしょう。 それから据え置き型を買い、その後いちど買い換えたのではなかったかと記憶しています。その2代目がすなわち、いままで使っていたスキャナだったわけですが、確か結婚前に買ったものだったはずなので、もう20年近く前からうちにあったことになります。 最近はコンビニエンスストアに置いてあるコピー機でも、書類などをPDFや画像ファイルとして取り込むことができるようになっていますので、さほど使っていないスキャナなど、もう個人的に持っている必要はないとも言えるのですが、やはり長年手許にあった機器が使えないままというのも気になります。この機に買い換えようと思いました。いままでのを買ったときの記憶では、さほど高額な買い物ではないはずです。20年近く前とはいえ、そのあいだに物価はそんなに上がっていません。 早速近くのY電機に出かけました。 ただ、この行きつけのY電機は、全体としては決して品揃えが悪いわけではないのに、どうしたわけか私が買いたいと思うものがなかなか買えないことが多いのでした。ここで目当てのものが見つからなくて、秋葉原や池袋の家電店まで足を伸ばさざるを得なかったことが何度もあります。あんまり相性が良くないのでしょう。 今日も、スキャナがどこにあるのかわからず、かなり店の中をぐるぐると歩きました。 プリンター売り場の一角に、わずかながら見つけたのですが、 ──あれ? スキャナってこんなに高いものだっけか? と思うような品物ばかりです。確か前は7、8千円くらいで入手できたはずが、3万円とか4万円とかの値がついていて、ここしばらくのデフレ現象を鑑みるとどうも納得できません。 いやそもそも、スキャナ単体での販売というのは、もうあまりおこなわれていないのでしょうか。少し高めのプリンターなどには、スキャナが附属品、もしくは機能の一部としてついているものなのかもしれません。だとすると前のような安いスキャナを買うのは難しいか、などと考えました。 どうもこの店ではあまりらちがあかなそうだと思った私は、Y電機のもうひとつの店舗に向かいました。さほど遠くはありません。現在使っているプリンターは、そちらの店舗で買いました。最初の店舗では在庫が無いと言われ、ずいぶん先にならないと入荷しないようだったので、ダメ元でもうひとつの店舗へ行ってみると、8台もの在庫があって即座に入手できたのでした。そんなことがあるので、今回のスキャナも、そちらなら用が足りるかと思ったのでした。 しかし、二度目の奇跡は起こりませんでした。そちらの店舗では、スキャナそのものが見当たらなかったのです。やはり、スキャナ単体での販売は先細りなのでしょうか。 私はまだ諦めません。そのY電機のすぐ近くに、K電機の店舗があるのです。K電機は、Y電機の店舗より古くからそこに店を構えており、私も以前はたいていそこで電化製品を購入していました。至近距離にY電機が進出して、だいぶ苦しい戦いを強いられていたようですが、最近はBカメラと提携したのか傘下に入ったのか、強力な後ろ盾を得て巻き返しを図っているらしい。 前のスキャナも、確かK電機で買ったものです。いちおうそちらも見てみようと思いました。 すると、ありました。確かに昔に較べ、スキャナという製品の品数は減っていましたが、記憶にある値段とさほど違わず、見た目もうちにあるスキャナによく似ている品が。 実際、うちにあるスキャナと同じメーカー、同じシリーズの後継機(と呼ぶにはずいぶん後なのでしょうが)であったようです。店員に在庫を訊いてみたら、あっさり持ってきてくれました。 しかも、後日に今日のレシートを持ってきたら、前のスキャナを引き取ってくれるとか。まあ大きなものではないので、危険ゴミの日にでも出せば拒否はされないと思いますが、やはり家電店に引き取って貰ったほうがリサイクルの観点からも良いでしょう。そういえば、Y電機でテレビなどを買ったとき、そういうことは言われなかったなと思います。おかげで古いテレビが処分できなくて困りました。K電機のほうがサービスが良いぞ、と思い、このところ近いこともあってY電機ばかり利用していたけれど、またK電機も活用することにしようか、と心に決めたのでした。 家に帰って、新しいスキャナをパソコンに接続しました。ドライバのインストールなどもネット経由でできるので簡便です。前のはいろいろ設定がややこしいところがあったのですが、今日買ったほうは、さすがに新しいだけあって、原稿の性質を勝手に読み取って、適した形式のファイルにしてくれるようになっていました。つまり、宿泊証明書や支払明細書を読ませるとPDFファイルにしてくれたし、運転免許証を読ませると画像ファイルのJPGとして作成してくれました。他にもいろんな機能が付け加えられているようで、いままでよりも案外使うことが多くなるかもしれないという気がしました。
スキャナが必要だったのは、上に書いた宿泊証明書と支払明細書、それから通帳のコピーと免許証のコピー、そして同行者居住地証明書です。 最後のものは、一旦Go To トラベル事務局のサイトから書式を呼び出してプリントアウトし、手書きで記入してからスキャンするという面倒な手順を踏みました。どうせならこれも入力フォームで済ませてくれれば良いのに。ひとり旅のときはこの証明書は不要ですが、ふたり以上の場合は出さなければなりません。証明書と言っても、こちらで同行者の在住都道府県を書いて提出するだけのことで、どういう根拠で証明されたことになるのかよくわかりません。虚偽を記載したことがわかったら還付金が下りませんよ、と脅かしているくらいのことです。 たぶんこの同行者居住地証明書と免許証などの住所証明は、東京都を除外するという後付けの条件が無ければ不要だったのではないかと思います。東京都民からの申請を却下するためのものだったのでしょう。いわば余計な手間でした。 フォームからの入力の良いところは、記載洩れがあった場合にすぐに指摘してくれる点でしょう。郵送書類で記載漏れや不備があった場合、いろいろと面倒くさいことになりますが、オンライン申請ではまずそういうことはありません。これはweb作成の確定申告書などでも実感しているところです。 一度だけミスの指摘がありましたが、すぐに受理されて、その旨のメールが届きました。これで、来月くらいには還付金が戻るわけです。 申請を済ませてから、ふと、還付される額と、今日購入したスキャナの値段が、だいたい同じくらいだったことに気づきました。還付されたお金でスキャナを新調したみたいなもので、それが得だったか損だったか、よくわかりません。 ちなみにGo To トラベルキャンペーンは、「旅行費用の支援」なので、交通費に関しても還付されるはずですが、残念ながら個人旅行ではその規定が無いようでした。申請に宿泊証明書が必要だという時点で、宿泊費に関してしか補助を受けられないことは明白だったのです。青春18きっぷの35%が戻ってくるなら、けっこう嬉しかったのですけれども。 (2020.8.23.) |
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