MIC's Convenience
第1回オフ会報告(その3)
船上にてコーストウェイズ海ほたるライン臨時便は、なぜか目の不自由な方々のたくさん含まれた「日韓経済協会」一同を満載して、その片隅に私たち一般乗客を乗せて、14時30分、日の出桟橋を出航いたしました。 満席というわけではありませんが、オフ会一行5人がまとまって坐れるところは見当たらず、やむなく左側の舷側に出て、船縁の柵に寄りかかりました。外の空気は寒からず暑からず、とても気持ちのいい温度でした。 船は2階建てで、1階はボックスを中心とした椅子席、2階はサロンのような形になっています。飲み物やおつまみを売っている売店は2階にあり、そこにビールという文字を見つけて、飲んべえのひでちゃんが窓越しにちらちらとそちらを気にしていました。しかし、出航後しばらく立たないと売店の営業が始まりません。 桟橋を離れた船は、早速レインボーブリッジを渡って、東京湾へと乗り出します。 「あんまり、潮の香りがせんですね」 kazさんが言いました。まだ河口のようなものですし、風もあまりありませんから、潮の香りはしないでしょう。 レインボーブリッジを隔てた対岸はお台場です。こちらから見ると、フジテレビの建物ばかり異様に目立ちます。 この春に就職して東京に住み始めたばかりのkazさんが、東京に住んでウン十年のAKO姉様に向かって、お台場の案内をしていました。 「あそこの丸いドームが、展望台になってるんですわ。下の方がレストランだったかな」 「ふううんっ、そうなんかぁぁぁぁぁぁぁっ♪」 聞くと、つい先日お台場に遊びに行ったのだとか。誰と一緒だったかはわかりません。こういう新しいスポットは、意外と東京っ子のAKO姉様の方が知らなかったりするものなのかもしれませんね。 そのうち、船室内の売店がようやく営業を始めたので、ひでちゃんは早速ビールを買い求めに人混みの中をかき分けてゆきました。AKO姉様とkazさんも一緒についてゆき、アイスクリームを買って戻ってきました。 船が動き始めたので、多少風を感じます。ひでちゃんはいちばん前方、つまり風上に陣取ってビールを飲み始めました。 「まだ潮の香りがしませんね」 「むしろ気のせいか、風に乗って酒の香りがやってきているような……」 「えっ、そうですかっ? えへへへ(^_^;;」 羽田空港が近いので、ひっきりなしに飛行機が低空飛行してゆきます。 空も混んでいますが、海も混んでいて、東京港は1日に2000隻以上の船が出入りしている、世界でも指折りの巨大な港なのだそうです。 豪華客船ともすれ違いました。「パシフィック・ヴィーナス」という5層甲板の大きな船。こんな船で優雅な旅を楽しめたらと思います。目下こちらは、ちっぽけな海上バスで座席もない状況。 ところで、 ──船に乗ってはみたいんだけど、船酔いが心配。 という人は多いのではないかと思います。 人によって、あるいは体調によって差はありますが、それほど簡単になるようなものでもありません。私は結構あちこちで船に乗る方ですが、今まで酔いそうになったのは1度だけです。その時は台風のために欠航になっていた遊覧船がようやく運航を再開した最初の便だったのですが、波のうねりがものすごくて、ほとんど豊島園のパイレーツ状態。さすがにうっぷと言いそうになりました。 今回のメンバーの中で、船酔いを異常に心配していたのが、誰あろうというか他にいないだろうというか、他ならぬAKO姉様でした。 計画段階から、 「AKOっ 船ん中でっ ゲロゲロゲロッピしたらっ 許してないっ」 というようなことを繰り返しおっしゃっており、実を言うと船に乗っているあいだじゅう、口を開けばそんなことばかり。 ウン十年前の幼少のみぎり、AKO姉様はとても乗り物酔いしやすいたちで、学校の遠足などのバスでも必ずゲロゲロゲロッピしていたとか。そのため、いつも先生の隣に坐って、ずっと手を握っていて貰ったのだそうです。 もっとも、子供の頃に乗り物酔いしやすい人はたくさんいるのであって、だんだん成長するにつれて酔わなくなるものです。 ただ、AKO姉様は前日にやや体調を崩して気分が悪かったということなので、それで過剰な心配をなさっていたのかもしれません。 ともかく、船に乗り込んで、船縁の柵に寄りかかるやいなや、 「ここだったらっ このまんまっ 海にっ 直接っ ゲロゲロゲロッピできるじょおおおおお」 とおっしゃったのには絶句モノでしたねえ。 船は、東京港を出るとスピードを上げます。最高27ノットだそうで、これは時速に換算すると50キロに相当します。きわめて高速です。 ということは、舷側にいる私たちにも時速50キロの風が当たっているわけです。秒速に換算すると約14メートル。もっとも弱い台風が17メートルですから、14メートルといえばかなりの風です。 もうひとつウンチクを傾けると、体感気温というものは、風速1メートルにつき1度低く感じるのだそうで、14メートルの風を受ければ14度気温が低くなったことに相当するわけです。 持って回った言い方をしましたが、要するに、スピードが上がったので、寒くなったのでした。 誰言うともなく、 「中に入りませんか」 ということになったのも、当然の成り行きでした。 中は幾分人の移動があったらしく、1階に下りると、ちょうど私たちが坐れるくらいの空席がありました。 もっとも、腰を下ろすとかえって揺れが大きく感じます。立っていると、自分で無意識のうちに傾きを調節しているのですが、坐るとその調節が利かなくなります。 早速、AKO姉様がまたゲロゲロゲロッピの話題を持ち出しましたが、ご本人はあまり酔いそうな感じでもなく、至ってお元気そう。 むしろだーこさんが、坐るなり眼を閉じてうつらうつらし始めました。 だーこさんは金曜の晩の夜行バスで金沢から上京し、土曜は他のサイトのオフ会に出席し、それが長引いて、その夜は結局夜明かししてしまい、午前中に1時間ばかり仮眠をとっただけで出てきたというのです。 なるほど、最初に「あうあう」と口ごもっていたのは、人見知りもさることながら、寝不足でモーローとしていたのかもしれないね。 その後、人見知りの方はすっかり馴れて、口数も多くなり、カモメを見ては 「カモメ、カモメ」 飛行機を見ては 「飛行機、飛行機」 と、さかんにおしゃべりしていたのですが(←赤ん坊かいっ(^_^;;)…… 半月ほど前に下見のためこの船に乗った時には、東京湾アクアラインの橋の下をくぐった憶えがあるのですが、今回はトンネルの上を横切ったようです。ご存じの方は多いでしょうが、東京湾アクアラインは木更津と川崎を結ぶ東京湾横断道路で、木更津側が橋、川崎側が海底トンネルとなっています。 その接続点にあるのが、客船の形を模した人工島「海ほたる」で、この航路は海ほたるラインの名の通り、人工島のすぐ近くをかすめてゆくはずなのですが…… 海底トンネルの排気口である「風の塔」は遠くに見えたものの、海ほたるのそばには残念ながら寄りませんでした。 これはどうも、臨時便だったせいらしい。 さらに、通常の便だと、横浜大桟橋に着く前に、みなとみらいに立ち寄るのですが、それもなく、横浜ベイブリッジをくぐったかと思うと、すぐに大桟橋に向かいました。 そのため、本来なら1時間55分かかる行程を、1時間半で済ませてしまい、16時ジャストに横浜到着。 なぜか、日韓経済協会の方々は、下りる気配を見せません。 どうやら、このまま東京へ戻るつもりらしい。 横浜へ行くのではなく、ただただ船に乗るだけの企画だったようです。 うーん、あっちの方が純粋かも。 でも、たくさんいた、眼の不自由なかたたち、これで楽しかったのかしら。 横浜港に入る時、さっきすれ違った「パシフィック・ヴィーナス」の姉妹船、「オリエント・ヴィーナス」と出逢いました。豪華客船はこちらを先に通し、あとから悠然と入港しました。なんだかこちらが水先案内をしているような気分になりました。 予定より短かったとはいえ、好天に恵まれた楽しい船の旅でした。 |
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