MIC's Convenience
第3回オフ会報告(その3)



あまり辛くないカレー


 上野動物園を出た私たちは、微妙に早足で上野公園の中の遊歩道を歩きました。遊歩道の終点が、ほぼ第二次集合地である京成上野駅の位置になっています。
 第二次集合時刻は17時40分でした。ほとんどドンピシャリというタイミングです。ホストとしては他の皆さんより少し早めに着いている必要があろうかとも思いましたが、陶李さんも行っていることだし、まあ問題はないかな、と考えました。
 京成上野駅の直上の階段を下りると、和服姿の陶李さんともうひとりの女性が通り過ぎるのが見えました。あちらもドンピシャリだったようです。
 和服姿のもうひとりの女性はゆーこさん。静岡県からいらしたそうで、陶李さんのカトリック美術展を見てから一緒に来たわけです。時間的には、動物園にも参加することはできたのですが、混雑した中を和服姿で長時間歩き廻るのは避けたかったので、第二部のみの参加とされたとか。
 あでやかな和装のふたりの女性ばかりについつい眼が行ってしまいましたが、あとふたり男性が付き従っていました。ぴーさんとおらさんで、やはり同じようにカトリック美術展からこちらに廻ったそうです。
 実は前もって、陶李さんに京成上野駅の場所の説明をしていたのですが、どうしても理解できなかったようで、

 おらっちが一緒に来るから、任せちゃおう♪」

と最初から自力到達を諦めておられたのでした。ぴーさんはギリギリまで確認がとれなかったのですが、ご一緒だったようで何よりです。
 京成上野駅に正面口から入ると、短いエスカレーターがあり、そのあたりを待ち合わせ場所にしていました。妙な場所ではあり、半端な時刻でもあり、今度は他には待ち合わせているらしきグループが居ません。今までお会いしたことのない人も多いのですが、これなら間違いようがないでしょう。
 あてにしていたパートさんが休みを取ってしまって、仕事がたて込んで来られなくなったと連絡のあったしんさんが現れたので驚きました。キャンセルする前に、あらかじめ写真をメールで送ってきてくださっていたので、こちらからはすぐ認識できました。向こうも、このグループを見ればすぐわかったことでしょう。なんとか仕事を繰り合わせて出てこられたのだそうで、良かったと思います。予約した人数からひとり増えましたが、料理をあらかじめ頼んでおいたわけでもないので大丈夫でしょう。
 それからずいぶん遠方から駆けつけてくださったモナリザ・もういらない子さんが到着。掲示板ではお馴染みだったのですが、このかたも初対面です。モナリザ・もういらない子さんは全然お顔も存じ上げなかったのですが、これまたこちらの団体を見ればすぐわかったに違いありません。それに、あとで出た話ですが……

 モナリザ・もういらない子って、どういう由来のハンドルネームなんですか?」

陶李さんが、おそらくみんな知りたがっていたであろう疑問をぶつけたのでした。

 「えーと、実は昔、似ているって言われたことがありまして……」

 言われてみると確かに、モナリザの絵と似たところが充分に感じられます。近くに居た人たちがうんうんと頷きました。だから、よく見ればこちらからも判別できたかもしれないのでした。

 「で、もういらない子の方は?」
「前に、ついていた先生に、『もういらないよ』って破門されたことがあって……ああ、今は戻らせて貰えたんですけどね」

 少し遅れてきゅるさんが到着。きゅるさんはラビンヤヂアさんとはネット以前からの旧知で、私とも一度顔を合わせたことがあります。「ダイヤの涙」の公演の時は、連れ立って、さらにもうひとりcrimsonさんというお仲間も一緒に見に来てくださったのでした。
 参加者はあと本田義剛さんというかたがいらっしゃるはずなのですが、この人は最初から、時間には間に合わないので直接お店にゆくという連絡がありましたので、これで全員集合です。
 連れ立ってインド料理屋「MANTRA」へ。私は下見に行っていたから迷わず皆さんを案内できましたが、皆さん口々に、

 「これは、直接行けと言われてたら、きっと無理だったなあ」

と言っておられました。何事も準備というものは大切ですね。


 下見に行った時に、一応予約はしていたのですが、その時話したインド人のマネージャーは、わかっているのかわかっていないのか心許なかったものですから、朝のうちにもう一度電話をかけて確認しておきました。幸い、電話には日本人のマネージャーが出たので話は早く、助かりました。私の名前は通じていたようですが、やはり確認しておいて良かったと思います。
 ターメリックの匂いが漂うエレベーターに乗って3階で下りると、そこは直接店内になっています。全員は乗れないほど小さなエレベーターでしたが、第一陣が下りてゆくと、すぐ

 「ご予約のMIC様ですね」

と話しかけてきました。
 この店はネットで探したのでしたが、そういう店にありがちなように、クーポンがついていました。クーポンのページをプリントアウトして持ってゆくと、いろんな特典があるというヤツです。
 「MANTRA」のクーポンは、

 1)ソフトドリンク1杯サービス
 2)食事代30%OFF(ディナーのみ)
 3)4名様以上で来店の場合5,000円コース半額


 というものでした。もちろんどれかひとつということです。3番の「5,000円コース半額」に大いに惹かれてこの店に決めたので、もちろんそれを頼みました。しかし確かに4名以上とはいえ、12人分も半額にしてしまっては、店にとっては大損害なのではあるまいかと気を廻します。むろん、どこかで帳尻が合うようにはなっているのでしょうが。
 例えば、このコースにはドリンクは含まれていませんので、大いに酒を飲ませて半額分を回収するということも考えられます。
 ところが今回のメンバー、そんなに然るべき大酒呑みは含まれていなかった模様で、私もアルコールはダメなたちですし、最初の乾杯こそインドビールでやったものの、早々とラッシー(インド名物の乳酸飲料。「飲むヨーグルト」みたいなもの)などソフトドリンクに切り替える人が少なくなく、飲み物での儲けも薄かったものと思われます。お店にとっては災難だったかも。


 ホストとして私が簡単な挨拶をしてから、ひとりひとりに自己紹介をしていただきました。もちろんハンドルネームを言うだけで、個人的に知っているケース以外は本名などわかりません。ハンドルネームとして本名を用いているらしい本田義剛さん、名前の方だけは本名らしいゆーこさんを除いては、見当もつかない人が少なくないのです。オフ会というのは奇妙な集まりだなあと改めて思います。
 ハンドルネームの話を続けますが、陶李さんの場合は陶芸家としての号で、社会的にもこの号を名乗っておられますから、まあ本名に準ずるハンドルネームと言えるかもしれません。本名の一部を用いているのがしんさんと私でしょう。私のMICというのは本名をローマ字書きした時の最初の3文字です。
 本名をアレンジしているのがだーこちゃんで、本名からの連想でつけているのがphaos先生。お二方ともネット上で本名を明かしておられるので書いてしまいますが、だーこというのは本名の幸田こーだと表記して逆から読んだもの。phaosというのは本名の星野の「星」から光を連想し、「光」に相当するギリシャ語をつけたものだそうです。
 ぴーさん、おらさん、きゅるさんは見当がつきません。本名も存じ上げませんし。
 モナリザ・もういらない子さんについては上に書きましたが、謎なのがラビンヤヂアさんです。上記の会話ののち、陶李さんはラビンヤヂアさんに矛先を変えてハンドルネームの由来を訊ねていましたが、ラビンヤヂアさんはただただ、

 テキトーっす」

と答えるばかり。確か昔ゲームのプレイヤーキャラにつけた名前からと聞いたことがあるのですが、ではそのプレイヤーキャラの名前はどこからつけたのかとさらに突っ込んでも、

 テキトーっす」

とのことでした。純粋になんとなく響きだけで命名したようです。そういうのもアリでしょうな。


 料理はタンドリーチキンサモサそれにサラダにはじまり、エビの串焼きチキンの炭火焼きラムのカバブなどと続き、それからカレー3種、サフランライスナンが来ました。
 最初のタンドリーチキンなどかなり辛かったのですが、メインディッシュと言うべきカレーは案外辛くありませんでした。

 「カレーは3種類つくんですが、どうなさいますか? 大体辛さを同じくらいにする方法と、3段階に分ける方法とあるんですが……」

と訊かれていたので、いろいろあった方がよいと思いましたから、後者の方法で頼んでおいたのでした。

 「では、辛くないものと、中辛のものと、辛いものをご用意させていただきます」

 そのはずだったのですが、いちばん辛みのあったチキンミルチでも中辛程度な感じで、ブロン(エビのカレー)とサグバニール(ほうれん草のカレー)はむしろ甘口と言ってよい味でした。下見でランチタイムに食べた時はもっと辛かったのですけれども。
 もっとも、カレーというのはたとえ甘口であっても、使われているスパイスに発汗作用があるため、食べると汗をかきます。和服の陶李さんとゆーこさんは大変だったかもしれません。
 そのあと、

 「サービスです」

と言って、カブリナンというものを持ってきてくれました。ナンの王様と言われているものらしく、ココナツやレーズンなどを入れてお菓子風に仕上げたナンでした。カレーと一緒にというより、そのまま食べておいしいものなのですが、生憎とこの時点になるといい加減みんなおなかがいっぱいになってきていて、せっかくのナンの王様も食べ残してしまったようです。
 最後にヨーグルトを使ったデザートとチャイ(ミルクティー)が出てコースが終了します。チャイにはスティックの砂糖が一本ずつついてきましたが、陶李さんがゆーこさんに

「砂糖、もし使い残すようだったら、ちょうだい」

と頼んでいました。

「あ、わたし使わないですから、このままどうぞ」

ゆーこさんは未開封のままのスティックを陶李さんに渡しました。それを見ていたモナリザ・もういらない子さんも、

「あ、わたしも入れませんから、使いますか」

と手渡すと、陶李さんは喜びました。近くにいたphaos先生と私も、半分ほど使い残した砂糖を差し出しましたが、陶李さんはそれらをかたっぱしからご自分のチャイの中に放り込んでいました。今までご一緒した時に、

「パフェ食べたいんですけど〜」

と言い出したことが何度かあり、甘いものに眼がないらしいのは知っていましたが……。みんな眼が点になっていました。それだけ甘いものを摂取しているのに、陶李さんはとても痩せておられるのが不思議です。
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