MIC's Convenience
第4回オフ会報告(その2)



素晴らしい集合


 名古屋駅桜通口にある金時計14時集合、ということにしてありました。もっとも全員ではありません。第一部会場であるささ木ホールに直行という人も何人か居たのでした。
 この集合場所、私は時刻表に載っていた駅の構内案内図で決めたのですが、意外にも

 「それ、どこ?」

 という人が何人も居て面食らいました。よく調べてみると、この金時計、去年の暮れにできたばかりだそうです。クルマ移動が主で滅多に電車など使わない人であれば、知らないのも無理はありません。
 しかしまあ、一応待ち合わせ場所として作られたモニュメントではありますし、その辺まで行けばわかるはずだと思って、集合場所の変更はしませんでした。
 私が名古屋に到着したのは正午ちょっと過ぎでした。昼食でもとっていればちょうど良い時刻になるでしょう。
 名古屋と言えばいろんな独特な食べ物がありますが、暑いので味噌カツ天むすを食べる気にはなれず、地下街の食堂で冷やしきしめんを食べました。一応専門店だったので味はよかったのですが、なにぶんきしめんですから、あっという間に食べ終わってしまい、時間がだいぶ余りました。どこかでお茶でも飲もうかと思いましたが、駅構内をうろうろしている間に結構時間が経ち、集合の30分ほど前になりましたので、少し早いながらも待っていようと考え、問題の金時計へ。
 かなり大きなモニュメントであり、これなら初めての人でも見逃しはしないでしょう。安心してその下で本を読み始めました。そうそうその前に、初対面の人への目印用に、私の編曲本『世界名作劇場・アルプスの少女ハイジ』を脇に抱えます。目立つグリーンの表紙だし、ハイジのセル画がついていますから、まず間違えることはないでしょうが、少々気恥ずかしいようでもあります。


 15分くらい前になって、だーこちゃんがこちらに向かってくるのが見えました。こう言ってはなんですが、彼と待ち合わせるとたいてい待たされるのですけれども、これだけ遠出になるとかえって間に合うらしい。
 手を振りましたが、だーこちゃんは気づかず、金時計のかたわらをずんずんずんと通り過ぎて行ってしまいました。いったいどこへ行く気だろうと思って唖然としていると、やがてあたふたと戻ってきました。

 「なんでこんな大きな時計に気づかないかな」

 「外にあるもんだと思いこんでたんですよ〜〜」

 見ると、朝あわてて出てきたのか、だーこちゃんの顔にはだいぶ無精ヒゲが伸びています。自分でも気になっていたらしく、

 「すいません、ちょっとヒゲ剃ってきます」

 「そっちにトイレがあったはずだよ」

 だーこちゃんは向こうへ駆けてゆき、私はまた文庫本に眼を落としました。
 ほどなくだーこちゃんが無精ヒゲのまま戻ってきました。

 「カミソリ忘れてきちゃいました。仕方ない、ヒゲぼうぼうで出席します」

 「そこらにコンビニみたい店もあると思うけど……」

 「……ちょっと行ってきます」

 だーこちゃんはまたもや向こうへ駆けてゆきました。今度は用が足りたのかなかなか戻ってこず、その間にJOEさんがマンドリンケースを抱えて登場しました。大阪からのわざわざの参加です。JOEさんとは前にいちど会ったことがあるので、久闊を叙します。

 「遠いところをご苦労様です。新幹線ですか?」

 「いや、近鉄特急で来ました。沿線なんで」

 見ると、マンドリンケース以外なんにも持っていません。

 「日帰りというわけですか」

 「どっちでもええんですけどね。明日の仕事は昼からやし」

 だーこちゃんがさっぱりした顔で戻ってきたので、JOEさんを紹介している間に、メルさんが現れました。初対面ですが、迷うことはお互いなかったようです。メルさんからすると『世界名作劇場』の表紙は目立ちますし、こちらからすると女性参加者は少ないので(全体としてみれば少なくもないのですが、直行組が多かったのでした)すぐ判別がつくわけです。ネットでの印象から、さまざまに想像しておりましたが、予想以上の美少女だったのでびっくり。
 直前になって、風邪をひいて熱を出したという報告があったため、参加が危ぶまれたのですが、頑張って出てきたらしい。

 「大丈夫なの?」

 「なんとか、大丈夫ですよ」

 「って、治ったんですか? それとも薬で抑えているだけ?」

 「そりゃあ、薬ですよ」

 あんまり無理をさせてはいけないなと肝に銘じます。
 そうこうするうちに、ぶんげんさんとなるしークンが相次いで姿を見せました。ぶんげんさんは初対面ですが、あるところで写真を拝見したことがあるのですぐわかりました。

 「ENAさんは直行するそうです」

 と、なるしークンから報告がありました。
 炎之Continuoさんも現れ、そうすると名古屋駅で待ち合わせたメンバーは揃ったことになります。時計を見るとまさに14時。ひとりも遅刻者の居ない、素晴らしい集合ぶりでした。

 「とりあえず自己紹介した方がいいかな」

 と私が言いかけると、炎之Continuoさんが

 「まず移動しちゃいましょうや」

 と提案。それもそうです。ささ木ホールへ行くには、JRの電車で5駅ほど先の大高まで行かなければなりません。大高は快速が停まらない駅なので、各駅停車に乗らなくてはなりませんが、その電車は14時06分発なのでした。東京と違って、そんなに次から次へと電車が来るわけではありません。いや、トータルで見ればかなり本数はあるのですが、各駅停車に限ると15分に一本という割合で、06分のを逃すと21分まで来ないのでした。
 「14時集合」で14時06分の電車に乗れるというのは、なかなかないことであって、私も21分まで待つことを覚悟してはおりましたが、こうなると何がなんでも06分の電車に乗りたくなります。炎之Continuoさんの提案に従い、挨拶や紹介は後回しにして、とにかく改札口へと急ぎました。


 大高までは15分ほどで着きましたが、ささ木ホールまでは最短距離を行っても1キロ半ばかり離れています。近くまで行くバスがあるにはあるのですが、本数が少なく、待っている間に歩けば着いてしまうほどの時間であるようです。
 1キロ半ばかり歩くのはなんでもないといえばなんでもないのですが、真夏の炎天下ではあり、荷物の大きな人も居ることではあり、さらに病み上がりのメルさんなども居ることでもあり、タクシーに分乗して向かうことにしました。メルさんは

 「あ、大丈夫です、大丈夫です」

 と言い張っていたものの、熱を薬で抑えているだけのお嬢さんを炎天下歩かせるわけにはゆきません。
 総勢7人でしたので、2台のタクシーに分乗できました。内訳を記すのは遠慮しますが、比較的細めの4人と、比較的太めの3人に分かれました。
 タクシーの通った道は、最短距離よりはいくぶん遠回りだったようで、到着直前にメーターが上がりました。しかしまあ、割り勘にすればバスに乗ったのと同じくらいの値段で済みました。
 結果から言えば、やはり歩くには少々しんどい道だったかな、と思います。けっこう登り坂でしたし、気温がもっと低くて、大きな荷物がなくて、病人が居なかったのであれば歩いてもよかったかもしれませんが、タクシーを拾ったのは正解でした。
 ささ木ホールは、外から見た感じではごく普通の一戸建ちの家という印象で、看板がなければホールであるとは気づかない人が多いことでしょう。玄関を入ると正面に居間兼用みたいな事務室があり、横手にホールのドアがついていました。
 このホールは個人経営で、オーナーの佐々木照治さんが老後の愉しみとして作ったのだそうです。普通の一戸建ちのように見えたのは当然なのでした。収容人数も最大40名と、ごくごく小さなものではありますが、

 ──プロが満足する音響空間。

 というオーナーのこだわりで、細部に至るまでずいぶんと凝った造りになっています。二階席までしつらえられていました。詳しいことをお知りになりたいかたはここをご覧ください。
 ENAさんたち4人はすでに到着していました。ENAさん以外の3人とは初対面で、今までネット上でのお付き合いもなかったのですが、今回合唱団仲間ということでいらしてくださったのでした。女性ふたり(faunaさん、さっちゃんさん──「ちゃん」「くん」付けのニックネームに「さん」「様」をつけるのはどうも違和感があるんですが、ここは一応初対面なので──)と男性ひとり(おおたさん)でした。
 まずはさっき省略しておいたご挨拶から始めます。まず私からひとこと申し上げたのは当然ですが、あとは自己紹介して貰うことにしました。
 オフ会では、基本的にネット上でのハンドルネームでお互い呼び合うことが普通で、はたから見ていると異様な雰囲気だったりします。何度も会っていても本名を知らないというケースもかなりあります。今回はハンドルネームと共に本名を名乗る人も多かったようですが、たぶん参加者同士、あんまり憶えていないことでしょう。
 ひとわたり自己紹介が終わって、さてどう進行しようかと私が迷っていますと、炎之Continuoさんが早速席を立ち、舞台上に置かれたピアノへ向かいました。
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